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適応障害とうつ病の関係

  • 斎藤知之
  • 2 日前
  • 読了時間: 4分

うつ病と適応障害と不安症の重なり

適応障害うつ病診断が交錯することがあります。


たとえば、ある精神科医から「適応障害」と診断されていたのに、別の精神科医から「うつ病」と診断される場合は少なくありません。診断が変わると、「前の診断が誤診だったのではないか」と疑う人もいるでしょう。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?


実は、適応障害の症状とうつ病の症状は大きく重なり、病気の本質としても大きく重なります。完全に別々の疾患というわけではありません。このような重複があるために、うつ病の症状が出ていても、適応障害と診断されることもあれば、うつ病と診断されることもあります。つまり、単に精神症状の確認だけでは、適応障害と診断することができません。


それでは、どのように適応障害と診断するのかというと、外的な要因、環境的な要因によって判断します。たとえば、職場での昇進、部署異動、対人トラブルなど、家庭内でのトラブル、離婚など、外からくるストレス、環境的なストレスはたくさんあります。こうしたストレスが強まり、その後に精神症状が出ていることが適応障害の診断基準の一つになります。


したがいまして、適応障害と診断するには、精神症状の確認だけでは足りず、仕事や家庭などの生活環境における強いストレスがあったかどうかを確認することが必要になります。精神科医が、仕事や家庭などのプライベートな内容を尋ねるのは、決して興味本位ではなく、診断に必要だからです。


適応障害は、こうした外的・環境的な要因・ストレスから離れると症状が改善していきます。落ち着いた環境で休めば、1週間でうつ症状や不安症状が治ることも珍しくありません。したがって、環境を変えて改善するかどうかを確認することも適応障害の診断につながります。


一方、環境を変えてストレスから離れたはずなのに、うつ症状が続くことがあります。この場合、適応障害からうつ病に診断が変わる可能性があります。うつ病の特徴として、症状の持続性があげられます。うつ病では、気力の低下、疲労感、不眠などが、ほとんど毎日、何週間も続きます。短期間休んだだけでは、うつ病の症状はなかなか改善しないことが多いのです。


最初は強いストレスによる一時的な症状だと思っていたけど、どんどん強くなって、症状が長引くという場合も珍しくありません。このような場合も、最初は適応障害、症状の持続によってはうつ病というように、時間経過にそって診断が変わっていくことになります。このように、症状自体に大きな変化がなくても、症状の経過とともに病名が変わることは、精神科ではよくあることなので、あらかじめ知っておくと動揺せずにすむと思います。


症状の経過とともに診断だけでなく治療方針も変わることがあります。たとえば、当初は「適応障害」と診断して、抗うつ薬を使わずに経過観察していたものの、うつ症状が長引いたので、「うつ病」に診断を変更して抗うつ薬を開始したところ症状が治るという場合があります。これは、適応障害に限った話ではなく、どの精神疾患であっても、症状が長引くとき、または、再発を繰り返す時は、診断や治療方針を変えることがあります。精神科の診断や治療は柔軟に変えていくことが大切です。


よりどころメンタルクリニック桜木町では、経過によって診断や治療を見直し、その時にベストな選択ができるよう心がけています。他院で治療中の方の診断や治療を見直すことも行っておりますので、ご要望があれば受診をご検討ください。その際に、過去の診断と治療内容を確認するため、診療情報提供書(紹介状)を主治医に記載してもらってください。


まれに、主治医が怖くて転院することを主治医に言い出せない場合や、主治医が診療情報提供書(紹介状)の作成を拒否することもあります。その際は仕方ありませんので、診療情報提供書(紹介状)がなくても大丈夫です。その代わり、おくすり手帳など、代わりの情報をお持ちください。

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