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人を信用できない悩み


人を信用できない

今回は持論を述べます。


時々、人を信用できないという相談をいただくことがあります。他人を信用できない、友人や家族を信用できないなど、対象は色々です。


これはなんとも返答しにくい問題です。そもそも、人を簡単に信用して良いのでしょうか?


昔から「人を見たら泥棒と思え」という言葉があります。これは、人を簡単に信用してはいけないという先人からの教えです。


現代でも、「人を見たら泥棒と思え」は通用するかもしれません。たとえば、殺人事件のほとんどは知り合いが知り合いを殺しています。犯罪白書を見ると、被害者面識率は非常に高く、親族率も決して低くありません。つまり、友人や家族から殺されることは少なくないのです。こうしたデータを基に、全ての人を殺人者だと思ってしまっては極論が過ぎるでしょうが、逆に、家族や友人だからといって簡単に信じてしまうのも極論が過ぎるのではないでしょうか。


たとえ、家族や友人であっても、その人が何をするのか完全には分かりません。人を簡単に信用するのは考えものです。


また、人と親しくなると、人間関係のトラブルは増えます。友人、職場の同僚、家族などとのトラブルは少なくありません。一方で、見ず知らずの他人と揉めることは少ないと思います。これは、信用または期待が関係しています。親しくなると、相手がこうしてくれると信じたり、期待したりします。しかし、他人は自分が思った通りに動かないものです。そして、自分が思っていた通りに相手が動かないと、「信じていたのに裏切られた」などと思い、ガッカリしたり、怒ったりします。それがトラブルにも発展することがあります。つまり、信用が対人関係のトラブルを生むこともあるのです。


特に、信用を高いレベルで考えると、トラブルに繋がりやすくなります。相手が自分のために何かしてくれると信じていたり、困った時に手伝ってくれると信じていたりすると、そのように信用される相手は負担やプレッシャーを感じやすくなります。高いレベルで信用すると、それは強い期待となって相手にプレッシャーを与えてしまいます。そして、相手が自分の期待どおりに動かないと、期待した人は怒るでしょうし、怒られる相手は理不尽だと感じるでしょう。こうして、高いレベルの信用、または強い期待は、トラブルの引き金になるわけです。


また、相手に自分を信用するよう無理強いするのもトラブルの元です。「どうして信じてくれないの」と怒る人も少なくないと思いますが、これも相手に対する過剰な期待です。信用とはそんなに簡単に作られるものではないので、簡単に信じてもらえないのは当たり前です。それにもかかわらず、信用を押し付けるのは理不尽です。やたらと自分を信用するようにとアピールする人は、詐欺師の可能性もありますから、かえって信用できません。


こうして考えると、信用とは、必ずしも良いものではなく、多くのネガティブな要素を伴うことが分かります。信用とは、とてもやっかいなものなのです。


私個人としては、信用とは、もっと低いレベルで行うべきものだと思います。たとえば、相手が自分のものを盗むことはないだろうとか、自分に暴力を振るうことはないだろうとか。相手に何かをしてくれると期待するよりも、少なくとも悪いことをしない程度に信じる方が、相手にプレッシャーを与えることもなくなります。


さらに、信用を築くには長い年月がかかります。強い信用を得るには10年以上かかるのではないかと思います。出会って数年の人をそこまで信用できないのは当然です。


冒頭に戻りますが、私としては、ほとんどの人は、自分以外の人を信じられないと悩む必要はないのだと思います。そもそも、簡単に人を信用しない方が良いかもしれません。また、短い付き合いの人を信用できないのは当たり前です。


信用できなくても好意を感じることはあり得ることですし、信用できなくても一緒にいるということもよくあることです。身の回りの人を皆信用することはなくとも、孤独になることはありません。逆に信用できる人しか付き合わない、会わないなどとしていると、周りに人がいなくなり、かえって孤独になるでしょう。


最後に信用と逆の意味を持つ、「疑う」ということにも触れます。人とは簡単に信用できないものですから、人を疑うのも仕方のないことです。


なかには、「証拠もないのに人を疑うのか」と言う人もいるでしょう。しかし、これは少し矛盾した話です。もしも決定的な証拠があれば、疑いというより事実だと確定します。そもそも、疑いの段階では、明確な証拠が無いのは当たり前です。したがって、人を疑う時に証拠はいりません。


しかし、誰でもあらぬ疑いをかけられると怒ります。人を疑う場合、簡単に口に出さないようにした方が良いです。できれば、自分自身の心の中に留めておきましょう。


特に、「あの人は怪しい」などと噂を振りまいて、疑いを多くの人に広めるのは大変に問題のある行為です。程度によっては、名誉毀損が成立して法的に処罰されてしまいます。


人を信用できない、疑わしいと思うことは仕方ないことで、気に病むことではありません。しかし、無用なトラブルを避けるために、口に出さず、心の中で思うにとどめるのが無難です。ご参考にしてみてください。


なお、信用とは別の話ですが、他者への恐怖心が強すぎる、人に見られると強く緊張するなど、対人緊張、対人恐怖の問題で社会生活にお困りの方は、社交不安障害(社交恐怖、対人恐怖)などの精神疾患も考えられます。精神科・心療内科の治療で、こうした症状を軽くすることができます。こうした症状が強い方や長引いている方は、良ければ受診してみてください。

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