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エスシタロプラムと統合失調症



エスシタロプラムと統合失調症

今回は、統合失調症という精神疾患の治療に関する研究論文をご紹介します。


統合失調症とは、様々な精神症状を呈する精神疾患です。幻聴、被害妄想が主な症状ですが、他にも、意欲が無くなる、感情が乏しくなる、知能が低下するなどの症状も出現します。


統合失調症は脳の神経回路の問題により症状が出ますので、神経回路の働きを正常化する薬を使うと改善します。具体的には、ドパミン系神経を調整する薬である、抗精神病薬と呼ばれる薬で治療します。しかし、なかには通常の治療で症状がなかなか改善しない場合があります。


治療が難しい場合を、治療抵抗性統合失調症と呼びますが、治療抵抗性統合失調症には、通常の抗精神病薬ではなく、クロザピンという薬を使うことがあります。しかし、クロザピンには血球減少という副作用のリスクがあるため、何度も採血をしないといけなかったり、使い始めは入院が必要だったりと、制約も多いのがデメリットです。


今回は、うつ病の薬であるエスシタロプラムが、治療抵抗性統合失調症の治療に有効かもしれないとの論文を見つけたので、ご紹介します。



これはメタ解析という手法により、複数の臨床研究のデータを統合的に分析した研究です。ここでは、抗精神病薬(通常の統合失調症の薬)と一緒に、抗うつ薬であるエスシタロプラムを使うとどうなるかを調べた研究を47個集めて分析しています。その結果、抗精神病薬にエスシタロプラムを重ねて使うと、統合失調症の症状が良くなるという結果が算出されました。しかも、クロザピンよりも効果が高いという結果も出たとのことです。


エスシタロプラムは、クロザピンほどの重篤な副作用がなく、入院せずとも投薬が可能です。もしもこの研究結果が本当なら、治療抵抗性統合失調症の治療としては、選択肢が増えることになります。まだ検証が足りない部分もありますし、日本で公認された治療ではありませんから、何とも言えませんが、今後の研究結果に期待したいところです。

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