不眠症・睡眠障害の治療と睡眠薬
更新日:11月28日
不眠症(睡眠障害)の場合、まずは睡眠習慣の見直しをおすすめしますが、それでも効果が無い場合は薬の治療を検討します。
精神疾患が原因の不眠
最初の前提ですが、たとえば、うつ病や統合失調症などの精神疾患により不眠症(睡眠障害)となった場合、睡眠薬だけ使っても効果が弱いです。かなり多くの人に見られる誤解は「眠れないから、精神的につらい」というもの。本来は逆で、精神的につらいから眠れないという順番です。この場合、不眠の原因となる精神疾患を治療せず、睡眠薬だけ使っても、なかなか効果は得られませんし、たとえ眠れても精神的に改善しません。薬を使う場合でも、うつ病の場合は抗うつ薬、統合失調症の場合は抗精神病薬など、原因となる精神疾患から治療し、睡眠薬は補助的に使います。
身体疾患による不眠
むずむず脚症候群(レストレスレッグ症候群)や睡眠時無呼吸症候群など、体の病気が原因で不眠、または過眠になることもあります。この場合も、まずは原因となる病気の治療から始めます。
睡眠薬について
不眠の原因となる病気や精神疾患がある場合でも、睡眠薬を使うことはあります。また、精神疾患とはいえない程度の不安で眠れないこともありますから、その場合は睡眠薬だけ使うことがあります。
睡眠薬の依存性
睡眠薬に依存性があることはだいぶ広まってきたと思います。とはいえ、覚せい剤程の強力な依存性があるわけではありませんから、過剰に心配することはありません。かつては安易に睡眠薬を使い依存してしまう方が多かったように思いますが、最近は過剰に睡眠薬の依存性を心配するかたも多いように思います。どうしても極端な情報の方が広まりやすいので仕方ないのですが、実際はその間くらいが妥当です。精神的な依存性のある睡眠薬は、毎日1ヶ月以上使うと依存性が出てきますが、時々使う分にはあまり心配しなくて良いですし、たとえ毎日使ったとしても、絶対にやめられないというほどのものではないです。
睡眠薬には30日の処方日数の制限が設けられているものと、そうでないものがあります。これは精神的な依存性や乱用のリスクにより判別されていますから、この処方日数制限により睡眠薬の依存性を大まかに判断できます。
30日処方制限のない薬
依存性や副作用が少ない睡眠薬には処方日数の制限がありません。ただし、日数制限が無いからと言って無限に処方できるわけではなく、安全性を保つため定期的に医師の診察は必要になりますので、誤解ないようお願いします。以下に一般名と、かっこ書きで商品名を列挙します。
レンボレキサント(デエビゴ):脳のオレキシン受容体に作用する薬で、効果が比較的早く、また持続しますので、寝付けない人(入眠困難)、夜途中で起きる人(中途覚醒、早朝覚醒)に有効です。
スボレキサント(ベルソムラ):レンボレキサントと同じく脳のオレキシン受容体に作用します。こちらは夜途中で起きる人(中途覚醒、早朝覚醒)に有効です。
ラメルテオン(ロゼレム):メラトニンという体内時計を調整するホルモンに類似する働きの薬です。寝付けない人(入眠困難)に有効で、時間調整の役割があるのが特徴です。
エスゾピクロン(ルネスタ):唾液が苦くなるのが特徴ですが、依存性や副作用は比較的少ないです。寝付けない人(入眠困難)、途中で起きる人(中途覚醒、早朝覚醒)におすすめです。
30日処方制限のある薬
軽度でも依存性や乱用の危険性がある睡眠薬は、投薬期間が30日までという制限が設けられます。ただし、使い方に気を付ければ安全に使用できますので、心配しすぎないで下さい。また、制限がある薬は強い薬と誤解される人も多いですが、薬の強さは用量しだいで、薬の量を減らせば弱くなります。
アモバン(ゾピクロン):エスゾピクロンに類似する薬です。唾液が苦くなるのが特徴ですが、依存性や副作用は比較的少ないです。寝付けない人(入眠困難)、途中で起きる人(中途覚醒、早朝覚醒)におすすめです。
ゾルピデム(マイスリー):効果がとても短い薬で、主に寝付けない人(入眠困難)におすすめできます。個人差はありますが、夜飲んでも朝には切れているので、寝過ごす心配が少ないです。
短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン系は、やや依存性があります。また、短時間型のものでも朝に残ることがあります。筋弛緩作用もあり、睡眠時無呼吸症候群の人は病状を悪化させる可能性があるので注意して下さい。お年寄りの場合は転びやすくなるリスクがあります。
例:ブロチゾラム(レンドルミン)、エスタゾラム(ユーロジン)、トリアゾラム(ハルシオン)
長時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬:こちらもやはりベンゾジアゼピン系ですから、やや依存性があります。長時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬は、とても長く効くことが特徴です。ただ、翌日に残る可能性が増えます。そして、日中の眠気や、記憶力・集中力の低下のリスクがあります。また、筋弛緩作用もありますから、睡眠時無呼吸症候群の人は病状を悪化させますし、お年寄りの場合は転びやすくなるリスクがあります。
例:フルニトラゼパム(サイレース)、ニトラゼパム(ベンザリン)
睡眠薬以外で睡眠作用のある薬
以下の薬は睡眠薬ではないものの、睡眠薬として利用することもできる薬です。
トラゾドン(レスリン、デジレル):これは抗うつ薬ですが睡眠作用が強く、睡眠薬として代用されることが多い薬です。処方日数制限はありません。
クエチアピン(セロクエル):クエチアピンは色々な効果のある薬です。第二世代抗精神病薬に分類され、統合失調症の治療に使われていますが、うつ病、双極性障害や不安障害にも効果があり、睡眠薬としても有効です。人によって翌日の眠気、血圧低下、立ちくらみ、めまいなどの副作用があります。
ミルタザピン(レメロン、リフレックス):これは抗うつ薬であり、うつ病の治療に使われます。持続時間が長い薬で、眠気が出ます。これを利用して睡眠薬として用いられることもあります。
アミトリプチリン(トリプタノール):これは抗うつ薬で、うつ病や不安障害の治療に使われます。眠気が出るので睡眠薬として使われることもあります。また夜尿症にも効能があります。
これら以外にも色々ありますが、代表的な睡眠薬は以上です。全て医療機関での処方が必要です。内科などでも処方可能ですが、不眠が長引く場合は専門となる心療内科や精神科で処方してもらって下さい。
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