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デュロキセチンとタバコ

更新日:2023年3月27日

このページについて:デュロキセチンというSNRIに分類される抗うつ薬の血中濃度が、タバコにより低下するという研究論文を紹介します。


薬には相互作用というものがあります。2種類以上の薬を使うと、薬同士がお互いに影響し合うのですが、これを薬の相互作用と言います。

特に高齢な人は、多くの薬を飲んであることが多いですから、薬の相互作用がよく問題になります。

この相互作用により、薬同士で効果を打ち消しあってしまうこともあれば、効果を増強しあうこともあります。副作用が増えることもあります。効果が長くなることもありますし、短くすることもあります。

何だか分かりにくいと思いますが、つまり、薬の相互作用は複雑というわけです。

ただ、薬の相互作用は、一般的な薬だけの話ではありません。実は身近にあるものが相互作用を起こすこともあります。

その一つがタバコ。タバコはニコチンやタールなど様々な物質を含んでおり、一種の薬みたいなものです。タバコもいくつもの薬に影響します。つまり薬の相互作用が起きるのです。他にはアルコールなども相互作用を起こしますね。

今回はデュロキセチンという抗うつ薬とタバコの関係を調べた研究論文を紹介します。デュロキセチンはSNRIに分類される抗うつ薬で、痛みにも効果があります。

この研究には、デュロキセチンによる治療を受けている人たちが参加しました。その中で、非喫煙者89人と、喫煙者36人の血液が調べられました。すると、喫煙者の血液では、デュロキセチンの濃度が低かったそうです。

実は、タバコは肝臓の代謝酵素であるCYP1A2というものに影響します。代謝酵素は他にも色々とありますが、薬を分解する働きがあります。

デュロキセチンはCYP1A2により分解されます。タバコはCYP1A2を誘導して効果を促進します。このせいで、デュロキセチンの分解が促進され、少なくなってしまうというメカニズムです。

他にも、オランザピンという薬が、タバコにより血中濃度が下がります。オランザピンは第2世代(非定型)抗精神病薬に分類される薬です。

血中濃度が下がれば薬の効果は弱まります。タバコを吸っている人は、デュロキセチンが分解されて血中濃度が下がってしまうので、薬の効果が弱まってしまう可能性があります。できたら、デュロキセチンを使う人はタバコを吸わない方が良いですが、それができない場合は他の薬に変えてもいいかもしれません。

今回は、薬の効果を弱めてしまう相互作用の話をしましたが、その逆もあります。一緒に使う薬の種類が多ければ多いほど、相互作用が起きる可能性は高まりますから、薬は最低限の種類にとどめた方が良いですね。

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