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認知症と介護離職

更新日:2023年3月27日

このページについて:認知症の介護は大変で離職してしまう人も多いです。介護の負担は認知症の精神症状と関係します。この辺りを説明します。


日本社会の高齢化、認知症患者の増加などに伴い、介護の問題が深刻化しています。介護は多大な時間と労力を費やす仕事です。働きながら介護をしている人も多いのですが、介護と仕事の両立が難しく、仕事を辞めて介護に専念する人も少なくありません。これは介護離職などと呼ばれ、社会問題化しています。

厚労省の統計(平成29年就業構造基本調査)を見ると、介護のために仕事を辞める人は毎年約10万人ほどいるそうで、全体の離職者のうち2%弱に当たる数字のようです。介護離職者の男女比を見ると、男性が約2割、女性が約8割。圧倒的に女性が多いのです。介護は女性がするものという慣習の影響もあるのでしょうか。また、仕事を続けながら介護をする人も多く、統計では346万人いるとのこと。特に40代から50代の方が多いそうです。

つまり、働く人を応援する、女性の就労をサポートするという意味でも、介護者の負担をどう減らしていくかが重要な課題ということです。

一言に介護といっても、様々なものがあります。負担の強い介護の一つに認知症の介護があります。特に、精神症状を伴う認知症の介護は負担が強いことが知られています。

認知症には色々なタイプがありますが、どの認知症でも精神症状や異常行動が出る可能性があります。

認知症の精神症状・異常行動は、専門用語でBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)とか、認知症の周辺症状などと呼びます。

特に、幻覚、妄想などの精神病症状や、イライラ、怒りっぽくなる(易怒性)、大声を出すなどの興奮系の精神症状があると、介護はとても大変です。認知症の人を責めても仕方がありません。別に、認知症を患う当人も、怒りたくて怒っているわけではないからです。認知症という病気のせいで感情の制御が難しくなるのです。精神症状がある場合、介護する側も大変だと思いますが、介護される側にとっても幸せな話ではありません。

認知症による精神症状は精神科的な治療により改善が見込めます。残念ながら、全てを改善することが難しかったり、治療薬の副作用の問題があったりするのですが、それでも対応策が無いわけではありません。認知症の精神症状にお困りの方は、一度、専門の医療機関に相談してみることをお勧めします。

また、介護される側の精神状態を安定させるためには、介護している側の精神状態も安定させる方が良いです。介護うつという言葉もありますが、介護者が介護の疲れ、ストレスなどからうつ状態に陥るケースは珍しくありません。介護うつのために仕事ができなくなることもあります。介護は肉体的な負担だけでなく、心理的な負担も強いのです。

介護者の精神状態が不安定だと、介護される側の精神状態も不安定になりがちです。人間は他者の感情の影響を受けます。不機嫌な人の相手をすれば、自分自身も不愉快な気持ちになります。特に身近な人、家族や友人の感情は自分自身の心に強く影響します。逆もまた真なりで、お互いに影響しあうわけです。例えば、介護者が心の健康を害し、介護される人も情緒不安定になり、介護者が更に心の健康を害するというように、お互いに悪影響を及ぼしあいながら、負のスパイラルに陥ることもあります。これでは誰にとっても不幸なことです。

介護により精神状態が不安定になった場合、精神科や心療内科に相談するのも一つの選択肢です。また、介護福祉系のプロに相談してみることも考えてみましょう。きっと心の支えになってくれるはずです。介護によるストレスでうつ状態になった場合は、単にうつ状態の治療をする方法ではうまくいきません。原因となっている介護の問題にも対策が必要です。

介護は一人ではできません。様々な人々の助けを借りることが大切です。助けを求めることは、恥ずかしいことではありません。介護の辛さを一人きりで抱えている人は、遠慮せずに周囲に相談できるところがないか、探してみて下さい。

参考文献・サイト:

平成29年就業構造基本調査

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