双極性障害の症状
更新日:2023年3月27日
双極性障害はかつて躁うつ病とも呼ばれた病気で、うつ病と見分けにくい病気です。うつ状態、躁状態、混合状態、認知機能障害など多様な症状を出します。
うつ状態
双極性障害によるうつ状態(抑うつ状態)の症状はうつ病と同じです。気分が落ち込み、意欲が出なくなります。しかし、双極性障害によるうつ状態の場合、非定型症状といって、体が鉛のように重くなり怠くなったり、食欲が増えたり、寝る時間が増えたり、気分が一時的に良くなったりするなどの特徴が出ることがあります。ただし、双極性障害によるうつ状態の全てに非定型症状が出るわけではありません。残念ながらうつ病と双極性障害のうつ状態を見分けるのは難しいです。ただし、双極性障害の場合はうつ病を何度も繰り返すという経過が特徴的です。
躁状態
双極性障害とうつ病を見分けるには、躁状態の有無を確認することが大事になります。気分が上がる症状は、躁状態、躁病エピソードなどと呼ばれます。気分が高揚し、活動的になる状態です。
躁状態になると、気が大きくなって、なんでもできるような気がしたり、たくさん買い物をしてしまったりします。そして、エネルギーがわいてきて、活動的になります。睡眠時間が減ることも多いです。また、たくさん話すようになり、社交的になります。色々とアイデアがわいてきて、目標が非常に高くなり、仕事への意識が高まります。イライラしたり、攻撃的になったり、怒りっぽくなる人もいます。人によって症状の出方は違いますが、とにかく活力に満ちた高エネルギー状態というイメージが躁状態です。
躁状態はうつ病と見分ける大事なポイントです。しかし、躁状態が軽い場合があります。これを双極Ⅱ型障害と言います。この時、本人も周りも躁状態を病気の症状だと思わず医師へ申告しないことがあります。このため、正しく診断できないケースが少なくありません。
躁状態が重症化すると、会話の内容が支離滅裂になります。また、重度の躁状態では幻覚や妄想という精神病症状が出現することもあります。これらは現実を正しく判断できなくなる症状です。双極性障害の妄想では誇大妄想が有名です。例えば、自分は過去の偉大な人物の生まれ変わりだとか、自分には超能力のような特別な力があるといった非現実的な事柄を本気で思い込むことがあります。重症化すれば、少なくとも周囲はおかしいと気づくはずです。
混合状態
1日のうちでもうつ状態と躁状態の両方が出現するような、激しく気分が変動する状態を混合状態(躁うつ混合状態)と言います。例えば、ずっと気持ちが塞ぎ込んでいるけど、急にイライラして怒鳴ってしまったり、急に楽しくなってハイになり、すぐにまた落ち込んだりするような、非常に情緒不安定な状態です。
うつ状態が主体で、時々、少しだけ軽い躁状態になるという場合もあります。こうなると、普通のうつ病と見間違えやすく、うつ病と誤解されてしまうことも少なくありません。うつ病では基本的に抗うつ薬を使いますが、混合状態の時に抗うつ薬を使うと余計に情緒不安定になります。双極性障害とうつ病は治療法が異なるので間違えないようにしないといけないのですが、区別がつきにくいという問題があるのです。
認知機能障害
双極性障害では、時に脳の知的な能力の障害である認知機能障害が出現することもあります。程度は違いますが、これは認知症の症状と同じです。記憶障害(特にワーキングメモリーといった瞬間的な記憶の障害)、情報処理速度の低下、遂行機能障害(順序立てて考えたり計画して実行する能力)などの認知機能障害が出ることが知られています。躁状態やうつ状態のように、気分が不安定な時だけ認知機能障害が出るのではなく、気分が安定している時でも認知機能障害が出ることがあります。
最近の研究では、躁状態が重篤なケースや、精神病症状を伴うケースなどで認知機能障害が出やすいという報告もあります(下記参照)。ただし、認知機能障害は全員に出現するわけではありません。双極性障害でも認知機能が正常な人もいますので、一概には言えません。ただ、こうした認知機能障害が出てしまうと、仕事や日常生活に悪影響を及ぼすことがあります。
参考文献:
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