抗うつ薬の適量
更新日:2023年3月27日
今回は抗うつ薬の適度な用量を調べた研究をご紹介します。
うつ病はメジャーな精神疾患の一つです。精神療法による治療もありますが、ある程度の重症度があれば薬を使った治療が行われます。
うつ病の治療薬には色々なものがありますが、まとめて抗うつ薬と呼びます。昔は三環形抗うつ薬がよく使われていましたが、今は、より副作用が少ないタイプの抗うつ薬があり、そちらが使われます。
今回は、抗うつ薬の適量を調べた研究をご紹介します。
これはどの薬にも言えることですが、薬は適量を使うことが大事です。あまりに少ない用量で使用していては治療になりませんし、増やしすぎると副作用が目立ってしまいます。多過ぎず少な過ぎず、適度な用量で使うことが大事なのです。
ここではメタ解析という、色々な研究論文の結果を集めて統計をとる方法で、抗うつ薬の適量が調べられました。なお、抗うつ薬は不安障害や強迫性障害など、色々な精神疾患に使われますが、今回の研究ではうつ病に対する抗うつ薬の効果が調べられています。
抗うつ薬にはいくつかのタイプがあります。一番よくつかわれるのはセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)というものです。日本で使われているSSRIには、エスシタロプラムやパロキセチン、セルトラリンなどがあります。また、海外ではフルオキセチンなど、別のSSRIも使われています。今回の研究では、SSRIの用量をフルオキセチンの用量に置き換えて計測しています。
調べた結果、フルオキセチンで20㎎から40㎎に相当する用量では効果は徐々に上がっていくものの、それ以上になると効果は変わらないか減少することが分かりました。つまり、多ければ多いほど良いのではなく、適切な範囲があるわけですね。
個別に見ると、エスシタロプラムは15㎎前後が治療効果のピークですし、パロキセチンは30㎎前後、セルトラリンは75㎎前後が治療効果のピークでした。それ以上は増やしても効果が増えないか、かえって減る可能性があります。
また、どの薬も薬を増やせば増やすほど、副作用により中止になる確率は上がります。副作用についてもよく考えないといけませんね。
ベンラファキシンという薬は、75mgから150mgまでは増やすと効果が順当に上がるのですが、150mg以上では用量を増やしても効果の上がり方は緩やかになります。
ミルタザピンという抗うつ薬は、30㎎くらいが治療効果のピークで、それ以上に増やすと効果が減弱するそうです。
過ぎたるは及ばざるが如しと申しますが、なんでもやり過ぎは駄目で、適度、適量というものがあります。抗うつ薬の治療もやり過ぎないように注意したいですね。
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